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【2024/09/22 20:24 】 |
勧善懲悪
その頃俺は、世間一般よろしくコマつきのチャリンコに乗っていた。

よくわかんないヒーローっぽい絵が描いてある黒いチャリンコ。

ハンドル中央部には、これまたよくわかんない赤いオブジェ風の飾り。

ガーガラガーガラいわせながら何も考えずに走ってた。

もちろん、当時の俺は、そのコマが取れる日の事など微塵も考えたことがなかった。

あって当然、コマは友達、漢と書いてコマと読む、そんな感じ。



ところが転機は突然、とても自然に訪れる。

耳にしなくても肌から吸収するあの感じ。

そう、ご近所コマ取りブームの到来。

もちろん、お隣のまゆちゃんもそのブームにのっかる1人だ。

そりゃー取るしかないでしょう、と一念発起しコマをはずす。

不安定な車体、左右にブレるハンドル、そして見守るご近所さん。

プレッシャーと不安はのっけからMAX。

もしかして、外したコマを再度装着することになるんではないだろうか・・・。

そう思っている矢先、ふいに安定する瞬間。

コツを掴んだ瞬間ってことだろうか、乗れてしまった、そう、コマなし自転車。



もう一気に無限大。可能性もフィールドも達成感も。

車体が左右にブレてもガラガラ言わない自由な感じ。

今まで0だったものが急に100になるあの感じ。

恐ろしいことに、あの瞬間のことは今でも鮮明に思い出せる。

ドキドキかワクワクかわかんないけど、本当にどこまでも行けるような気がした。

コマなしチャリンコと俺は「俺たちの国境は地平線さ」を合言葉に走りだした。





時は流れ現在。夢と希望に満ちたチャリんこ少年は、もはや青年。

あの頃感じた無限の可能性は歳月を重ねるごとに狭くなり、

今では有限な可能性となりました。これが大人になるってことだろうか。

そんな青年は、ふと天国と地獄について考えた。

もし天国や地獄があるとしたら、俺は間違いなく地獄に落ちるだろう、と。

その分岐が殺人したかしてないか、とか大雑把なものならギリ天国。

でも大方違うだろうさ。今までした小さな悪いことがギッシリとメモされてる。

まさにデスノート。振り返った青年の人生は、ひどく汚れてる。

いやーその節は申し訳なかったです!

と陽気にふるまっても今更感でむせ返りそうになる。



でもあれだよね、俺地獄に落ちる割にはショボい。今んとこショボい。

悪魔に魂を売ったこともないし、金のために友達をFBIに突き出したこともない。

だからうどんばっか食ってるし、知名度も全然ない。

俺は世界の最終兵器だからCIAのエージェントすら俺のことは知らない、

とか言っても全然通る。

それを考えると世界の悪者は、同じ地獄行きとしてもすごいね。

金や名声や権力をどうにかこうにか手に入れて、一瞬なりとも華がある。

それにひきかえ、俺。食って弾いて寝る。なんて地味。

どうせ地獄に落ちるなら、もっと華々しく落ちたい。



変わるなら今、変えるのは俺。

3世代かかっても使えないくらいの金を手に、合衆国を影であやつる俺。

正義に倒されてもサイボーグとかそんなので何とかなる俺。

それでこその地獄。地獄への敬意。地獄への憧れ。堅実な将来設計。

もちろんあなたも大方地獄いきですよ。デスノートは細かいから。

準備はOK?思い残すことはなにもない?




あーなんてひねた前向き。破綻した計画性。

でもね、前向きって大事なんだと思うのさ。あとフットワークと。



とりあえずコツコツ宝くじでも買おうと思います。

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【2009/01/09 19:24 】 | G&Cho:ナカムラ | コメント(0) | トラックバック()
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